第二次再審請求の概要

新証拠1 凶器について

特徴的な遺体の傷の謎

本件事件の被害者らの遺体には、複数の特徴的な傷が残されていました。

①被害者らの下顎部の傷

 Aさんの下顎部には、創口3.7㎝の損傷があり、骨膜を破り下顎骨の骨折が生じていました。同様に被害女性の下顎骨にも創口3.0㎝で骨膜に達し骨折が生じている損傷が存在していたのです。確定判決はこれらの傷を「バール様の凶器」によるものと認定しました。

バール

②Bさんの胸部・背部の多数の傷

 Bさんの胸部・背部からは、創角が尖鋭、創縁が正鋭、創壁が平滑という特徴の創口の長さ0.6~1.0㎝、幅0.1~0.6㎝、深さ約1.5~4.0㎝の損傷が多数認められました。

そして確定判決はこれらの傷を「ドライバー様の凶器」によるものと認定したのです。

ドライバー

凶器はバールとドライバーではない

 しかし、弁護団の実験により、遺体の傷はバールとドライバーでは作り出すことができず、凶器はバール様の凶器とドライバー様の凶器ではなかったことが明らかになったのです。

① 凶器は「バール様の凶器」ではない

 筑波大学の本田克也医師による鑑定により、被害者らの下顎部の傷はバールの様の凶器では生じないことが明らかになりました。

 さらには、「鳶口(とびくち)」が使用されたとすれば被害者らの下顎部の傷と矛盾しないということも本田医師の鑑定により判明しました。

鳶口

② 凶器は「ドライバー様の凶器」ではない

 同様に本田医師による鑑定によって、ドライバー様の凶器による傷とされていたBさんの胸部・頸部・背部等の小傷はドライバーの様の凶器では生じないことがも明らかになりました。

 そしてこれらの傷を矛盾なく説明できる凶器としてペーパーナイフなどに見られる「細身のナイフのような形状の凶器」が使用されたとすればBさんの傷と矛盾しないということも本田医師の鑑定により判明しました。

③凶器に「鉈(なた)」が使用された可能性

 さらには、弁護団によって行われた前記の関係者Yからの聞き取り調査によって、凶器に「鉈(なた)」が使用された可能性が浮上しました。

 そこで、弁護団は、再度本田医師に鑑定を依頼し、鉈を使用して実験を行ったところ、鉈で被害者の下顎部の傷が形成されたと考えても矛盾しないとの鑑定結果を得たのです。

新証拠2 真犯人を示す証拠

 弁護団の調査の結果、事件を境に現場から「あるもの」が消失していることが明らかになりました。それは、「事件の5日前に振り出された4000万円の小切手」です。

 事件の5日前に振り出された小切手が、事件を境に消失しているということは、つまり、真犯人の狙いはこの小切手や、小切手に関する書類だった可能性があるということです。

 しかも、小切手の振出人たる会社の代表者Xは、有名企業の従業員たる肩書きを利用して、方々の金融業者から融資を受けて地上げを行っていたものの、とあるプロジェクトの地上げにつまづいた結果、16億円の詐欺事件を起こし、鶴見事件当時は実刑判決を受けて控訴し、保釈中だったことが明らかになりました。さらに、Xは、詐欺事件により解雇された後、おそらくは解雇の事実を秘匿してYのAさんに対する3億円の債務について保証する行為をしたことが明らかとなっています。

 結局、4000万円の小切手は、有名企業の従業員の職を失ったXが、それを秘して保証をしたことについてAさんから追及され、保証債務の履行の猶予を受けるために振り出したいわば詐欺の証拠ともいうべきものだったと考えられるのです。

 さらに、Xの周辺には、暴力団関係者Zが存在したことも明らかになっています。

以上から、真犯人の動機は、確定判決が前提とする1200万円の奪取ではなく、支払呈示期間中に小切手を回収することである現実的な可能性が浮上したのです。そして、事件の真相が小切手が関係する多額の融資をめぐるトラブルであったとすれば、まさに捜査本部が当初考えていた「地上げなどの裏金工作のため、Aさんが利用された上、口封じのために殺された可能性がある」という見立てとも符合します。

 そして、このストーリーは、事件が6月20日に起きたことを説明できるのです。

 小切手の振り出しは6月15日ですから、支払呈示期間は6月25日までです(Aさんが利用していた銀行は、土曜日も営業していました)。

 ①真犯人は振出日から数日は金策に走ったはずであること、②Aさんの事務所は火曜日がお休みだったこと、③25日当日に回収するのでは遅すぎることからすると、10日間のうち、真犯人にとっては20日、22日、23日、24日くらいしか、候補日はなかったものといえます。

 この日に事件が起きてしまったことは、真犯人の存在を否定する「あり得ない偶然」などではなかったのです。

 

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